Special スペシャル

「負の方向へ行きすぎないように」
重いイメージを払拭するかすかな光
林雅紀&松岡貴徳 両プロデューサーインタビュー

TVアニメ『消滅都市』の放送が、いよいよ翌月に迫った。ここで公開しているスタッフインタビューも、第3弾だ。今回は、マッドハウスの林雅紀プロデューサーを迎え、ポニーキャニオンの松岡貴徳プロデューサーと“P同士の対談”を行なった。


「考えるほど難しい」いきなり壁にぶちあたる

――まずは、『消滅都市』のアニメーション制作をマッドハウスさんに決めた理由から教えていただけますか?

松岡P 最初は、純粋にマッドハウスさんと一緒に何かをやってみたかったんです。うちの会社って、マッドハウスさんとご一緒したことがあまり多くないと思います。

――言われてみると、ないかもしれませんね。

松岡P それにマッドハウスさん制作のいろんな作品を観て本作のイメージが浮かんだし、最初からマッドハウスさんありきと思っていました。だからマッドハウスさんにしか話を持っていっていないんです。もし断られたらしれから考えようと。

――そうして、林さんが制作プロデューサーを務めることになるわけですが、その経緯は?

松岡P 僕がマッドハウスさんにこの企画を持っていった段階では、ひとまず営業の方にお話をするんですけど、実は、そのときは断られそうな雰囲気だったんです。アプリゲーム原作のアニメって難しいですからね。なので、不安視している部分を取り払おうと「こうだから大丈夫です」と一つひとつお伝えしてご相談しながら、ある程度クリアになると、マッドハウスさんでは「こんなアニメ化企画があるけど、やりたい人?」ってプロデューサーを募るらしいんですよね。

林P そこで、手をあげたのが僕ですね。それまで『消滅都市』に触れたことはなかったんですけど、しばらくゲームをプレイしてみてストーリーはわかりやすいしキャッチーだし、アニメにするのも面白そうだと思ったんです。ただ、2〜3週間プレイしただけでは内容を把握できていなかったんですよ、正直。

――4年超続いているゲームでストーリーも進んでいるので、全貌を掴むのも難しいですよね。

林P だからいざ作るとなってから「これはヤバいぞ」と自覚しました。これは難しい。こんなに難しいのは初めてだって。

――というと、どんなところが?

林P なんでしょう……基がちゃんとあるんだけど、ちゃんとないんです。

松岡P ああ、わかります。小説やマンガは読み物なので読んで理解できるように作られていますけど、消滅都市はゲームのテンポ感の中でドラマを体験することに最適化されているから、いろんな部分がかなりダイナミックに省略されてるんですよね。

林P 無いなら無いで、全くない方が楽なんですよね(笑)。ゼロから生み出せるから。あるところはしっかりあるので、どう繋げるかが難しかったです。

――いきなり壁にぶつかったんですね。

林P そうですよ! 考えれば考えるほどこんなに難しいことないって思っていました。「大丈夫か? 俺ら沼にはまっていないか!?」みたいな。

松岡P 僕的には、ファンタジー系のRPGじゃない限りは陥りがちだよなって経験則でわかるんですけど、はじめてだと確かにその部分は悩むかもしれ無いですね。あ、でも本作のバトルに関しては僕も難しくて。バイクの扱い以外は正直ノーアイデアで相談をしたのは覚えています。

――以前の対談でもありましたが、バイクに乗りっぱなしではアニメだと辻褄が合わなくなるんですよね。

林P 表現にも限界がありますからね。

松岡P 「どうやったら格好良くなりますかね?」とも伝えて、会議でもすごく悩みましたよね。

林P だから、バトルやアクションに加えてよりドラマ性をみせていこうとなって、監督の人選に当たりました。宮監督はドラマもアクションも得意なんですけど、どちらかというと本人は「ドラマ性を重視した作品を作りたい」という意志が強い人なのでぴったりでしたね。

熱を帯びた“素直”な話し合い

――主要スタッフが揃い、打ち合わせが始まったのはいつ頃ですか?

林P 顔合わせは2017年の春ですね。

松岡P そこからシナリオやキャラクターデザイン、美術設定などを並行して進めていきました。宮監督は、シナリオを進めていく中でイメージを作っていって。

林P そうそう、監督、映像のイメージはずっとあったみたいですね。

松岡P ただ、そのイメージの説明がわかりませんでしたね。自分の頭にあるものを、そのまま言葉にするのって誰でも難しいものじゃないですか。

林P 監督の中には明確な答えがあるんですよ。だけど、それを宮さんの言葉で聞いても、「え?」ってなっちゃう。絵を描いて説明してくれると、わかりやすいんですけど、もっとざっくりしてるときは難解で。「こういうことですか?」って言ったら「違う」みたいな(笑)。

――この作品自体、ほかにない世界観だから「〜のようなもの」って言いにくそうですし。

林P そうなんですよね。そのあたりはシリーズ構成の入江さんが一番苦労したと思います。宮監督の言わんとしていることを読み解いて、シナリオを書かないといけなかったので。

――会議は白熱していたそうですね。

松岡P ああもう、白熱しましたしました(笑)。現場の熱量はすごくよかったですよ! ケンカ……じゃなくて(笑)、良いディスカッションができた感覚はあります。みんな、そういう場って気をつかうものじゃないですか。「ここは原作の方を立てるべきだろう」「ここは監督、シリーズ構成の方の言うことがいいんだろう」とか。 

――大人ですし。

林P そう、大人ですし(笑)。だけど、どんな立場の人の意見だろうが違うと思ったらみんな「違う!」って言えるんですよ。僕も、松岡さんの意見が面白くないと思ったら「それは違いますよ」って言いますし。「下田さん(原作のシリーズディレクター兼シナリオライター)、それダサいっすわ!」って思うことは素直に。誰が相手だからとかではなく。

松岡P それが当たり前でしたよね。それに否定だけじゃなかったから許せたんです。「それはつまんないです。こっちの方がいいんじゃないですか?」「ああ確かに」ってちゃんとみんなそれぞれに考えをもって否定しているから、それぞれの意見を飲み込もうという意識はあるんですよ。そうするとモメない。

――そういった話し合いを経て、本格的にアニメーションの制作が始まったのはいつ頃ですか?

林P キャラクターデザインや美術が仕上がってきて、さあ始めるか!となったのは2018年の5月ですね。

――ここまでもいろんな苦難がありましたが、この頃の苦労は?

林P 良い意味で、クセの強いスタッフが揃っているんですよ。クリエイティブの塊というか。そんな人ばかりだったので、それぞれの特色を活かしつつまとめることが難しかったです。全部の工程そうなんですが、それをまとめ上げるのが楽しかったと言えば楽しかったですけど、苦労しましたね。うちの制作陣で一番苦労したのはここです。

松岡P そういうところで、林さんがはっきり言ってくれているんですよ。荒ぶられたら荒ぶられたまま終わるという現場もあるので、プロデューサーとしての仕事をしてくれている信頼感がありました。

林P 例えば、「なぜこの見せ方がダメなのか理屈を伝えないと、みんな理解でき無いですよ」と言うと、監督から「理屈はない」って返ってきたりするんですよ。そうしたら、バトルですよね。「わかんないから聞いとんじゃ!」って言いますね(笑)。でも「消滅都市」に限らず、映像作品の演出手法において演出家や監督には譲れないものがあるんです。それは当たり前だと思うんですよね。そこが無くなったら演出家って何? 監督って何?ってなりますから。

――極力理解したうえでまとめ上げるのもプロデューサーの役割なんですね。

林P 人に答えはないんですよ。日によって感情が違うから、現場でも「Aのプランで行こう」とまとまっていたはずのことが、翌日には反応が悪くなることもある。いろんなことを加味して、みんなの筆が進む環境にしたいですよね。

――では、原作(WFS)とのやり取りはいかがでしたか?

林P 印象的だったのは、第1話の絵コンテです。ヒートアップというほどではないんですけど下田さんは消滅都市に対する思いがすごく強い方なのはもちろん、映像作品もわかっていらっしゃる方で。絵コンテが“読める”んですよ。

――普通は、描いてある絵や文字指定をそのまま受け取ることしかできません。

林P でも、下田さんは動きまで理解できるし、映像が頭に浮かぶ。

松岡P アニメに関わってない方でちゃんとコンテ読めるってすごいですよね。

林P そうすると、僕ら視点の指摘が入るんです。「画角が違うんじゃないですか?」「ここのレイアウトはこうとったほうが心情を表しやすいんじゃないですか?」みたいな。もはや演出家ですよ! だから、演出も務める監督とバトりやすいんです。監督が「僕の演出は不服かい?」ってなっちゃうので。ここで大変だったのは松岡さんだと思いますよ。

――双方の意見をそのまま伝えるわけにはいきませんからね。

松岡P もちろん。僕自身、反論があることをわかって投げていました(笑)。伝えるのは苦労しましたね。表情の伝わらない文面でのやりとりが多いので、人によって受け取り方がガラッと変わってしまうから。

第1話制作時すでに手応えはあった

――では、アニメーションを作っていくなかで林さんがブレないようにしていたところはどこですか?

林P 僕個人の意見ですが、「ヒーロー」という部分をブレないようにしていました。本来、ストーリー的にはユキが主人公なんですけど、僕の中ではタクヤを主人公にしていて。

――だからヒーロー。

林P はい。ロストが起きて人が大勢消滅しているという、状況としては負の方へ向くお話じゃないですか。観ている方も辛くなると思うんですよね。だから息抜き的要素として、陽の部分を加えようと思いヒーローらしい熱さを意識していました。なので、本読みのときは「こういったほうがヒーローっぽいんじゃないか」という思いのもと提案をさせていただきましたね。絵の方もそうですし、シナリオもそう。「違う! もっと少年漫画みたいにしてくれ!」ってよく入江さんに言ってました(笑)。

――タクヤの活躍にも期待がかかりそうですね。あとはCGの使い方もすごく効果的だったと感じます。

林P 日常シーンとかは使ってないので、割と抑えめですがバイクで走っているところは背景ともにCGで組んでいます。あとは、アクションシーンもそうですね。実は、よく見ていただくと色がややこしいことになっているんですよ。背景には、意味のわからないところに緑とか紫が入っていたりします。観てもらえると背景さんが喜ぶのでじっくり観てみてください。通常の作品よりも時間かかっているところかと思います。

――放送が楽しみになるポイントをたくさん聞けた気がしますが、「このアニメいけるぞ!」と手応えを感じたところはどこですか?

林P それはもう、さっきも少しお話した第1話のコンテですね。僕も制作の人間なのでシナリオだけでは想像できないことがあるんですが、宮監督の絵コンテはすごいんですよ。絵コンテが映像なんです。

松岡P 僕も、あんな絵コンテ見たことなかったです。すごかった。あれがコンテだなって思います。

林P そうそう、そうなんですよね。

松岡P 指示がすごく細かいんですよね。指示が少ないと意図が伝わりづらくて間違えることも多いですけど、全部書いてあって細かいから間違えないしわかりやすい。それに、絵もうまいし。下田さんも、コンテを見て「すごいですね!宮さんヤバイ!」って言っていました。コンテで各所を納得させた感じはありますね。

――すごい、カッコいいですね。

林P なので、第1話のコンテですでに手応えはありました。

――では放送を楽しみにしている方たちへ、第1話の見どころを教えてください。

林P 第1話ですが、盛りすぎていなくてすごく良かったです。なんて言うんでしょう……いろんな情報は散りばめられているんですけど、全体を把握できないんです。その感覚が絶妙で、良かったなって僕は思いますね。一歩間違えば不完全燃焼だと思うんですがそれを感じず、良い着地点に落ちている。僕は、冷静に第2話を見てみようと思えました。

松岡P さっき、ヒーローの話で林さんが言っていましたが、僕もアニメにする上で見ていて辛くなりすぎないようにしたいと思ったんです。「消滅した都市の話」と、それだけ聞くと結構重く感じますから、そこの塩梅はちょうど良くなっていると思います。このアニメには、2通りの観方があります。普通に観ても「どうなるんだろうな」って興味を引くし、じっくり考え込みながら観るのも「なんだろうこれ」という疑問がいっぱい見つかってと気になって仕方がないと思います。ぜひ、好きな見方で楽しんで頂けたら嬉しいです!!