Special スペシャル

「この世界は現実と地続きである」
フィクションの中でリアルを追い求めた
シリーズ構成・入江信吾&プロデューサー・松岡貴徳インタビュー

4月から放送がスタートするテレビアニメ『消滅都市』。これにともない、宮繁之監督と、松岡貴徳プロデューサー(ポニーキャニオン)によるスタッフインタビューが公開されているが、今回はこれの第2弾。
シリーズ構成の入江信吾氏を迎え、松岡プロデューサーと対談を行なった。


実写経験のある脚本家が必要だった

――このたびは、アニメ化おめでとうございます。これを発表したのは2018年5月のイベントでしたね。

入江氏 そうそう、実は僕あのイベントを観に行っていたんです。そうしたら、アニメ化の発表で聞いたことがないくらいのどよめきが起こっていて。

松岡P 泣いて下さっている方もいましたもんね。

入江氏 改めてすごい作品に関わっているんだなと思いました。

松岡P 確か、アニメ化のお話をWright Flyer Studiosさんに持っていったのは2016年。別のところから同じような話が来ていないかまずはお伺いしたのですが、そこで「実は話はあったんだけどうまく進まなくて」と聞いて。うちとの話が進みました。

入江氏 良かったですよね。これが“2度目の消滅”にならなくて(笑)。

松岡P 本当ですよ(笑)。

――では3年くらい前に始動していたんですね。

入江氏 3年前は、まだ僕が存在していなかった頃ですね。

――そこから制作会社とスタッフを招集したわけですね。

入江氏 そもそも、どうやってMADHOUSEさんに決めたんですか?

松岡P それは最初からこの世界観を作ってもらうならMADHOUSEさんだろうと決めていたんです。Wright Flyer Studiosさんも「MADHOUSEさんならぜひ」という話でしたし。そこで、MADHOUSEの林さんがプロデューサーに決まったという流れですね。

入江氏 そのあとで、僕に声をかけてもらったんですよね。なんで僕だったんだろう? 傷つかない程度に教えてください(笑)。

松岡P ストーリーを思い描いたとき、実写っぽさも必要だなと思ったんです。そこで、シナリオを書いてもらうならアニメの脚本もしたことがありつつ、実写もやっている脚本家さんがいいなと思いまして。そんな人いるのかな?とは思ったんですけど、「いますよ」って林さんが。聞いたら経歴的にバッチリでした。

――入江さんは、『相棒』から『黒子のバスケ』など、様々なドラマ、映画、アニメに関わっていますもんね。

入江氏 ただ、アニメのシリーズ構成は、はじめての経験だったんですよ。それなのに声をかけてくれるなんてありがたい。

――プレッシャーもあったのでは?

入江氏 もちろんありましたけど、それよりも脚本全体の流れを作れるシリーズ構成はやってみたかったんです。最初は「(各話の脚本を担当する)ライターも入るだろう」と思っていましたし。まあでも、結局誰も入らなかったんですけど(笑)。ひとりで全話完走できて自信にもなりましたし、自由が効くのはよかったです。

――ちなみに、この作品の脚本に決まりゲームにハマったとか。

入江氏 そうなんですよ(笑)。放っておいたら1日8時間くらいやっていて、もはやどっちが仕事かわからないくらいでした。もともとゲーム中毒なので。1年でランク300いきました。それって結構すごいらしいですよ。

松岡P だからすごく頼もしかったです。僕は、客観視出来るように原作のゲームをあまりやり込み過ぎないようにしているんですよ。いつも世界観やストーリーがある程度わかったところでやめているんです。だから、ゲームのことで細かいところや疑問があるとその都度、聞いたりしてました。

入江氏 脚本を進めていく中で時系列どうなってるんだっけ?となったりもしましたね。

松岡P それをまとめてくれたのが入江さんですから。すごく頼りになりました。

入江氏 あのとき一番詳しかったのはたぶん僕でしたよね(笑)。

松岡P 「どうなってましたっけ?」と聞いたら全部出てくるから。みんなで「入江さんすげー!」ってなっていましたね。

――原作ゲームのどこにハマってしまいましたか?

入江氏 疾走感と謎の快感があって。中毒性を感じました(笑)。親指1本でプレイできるのに結構複雑で、スキル発動とかアクション要素とかいろいろあるんですよね。それに加えて、パーティ編成まであるので、自分の考えた編成が見事に当たったときなんかは達成感がありました。だから、やめられなくなりました(笑)。ストーリーもすごく奥深くて夢中でやっていましたね。と同時に、これをどうやってアニメのシナリオにまとめるんだろう?とも思っていました。

原作側の理解を得てアニメの見せ方を追求

――シナリオ会議はどのように進みましたか?

松岡P まずはどこまでやるかという話ですよね。

入江氏 どこまでアニメで描くかを聞いて「予想通りだ」と安心したのは覚えています。何より、原作側のシリーズディレクター兼シナリオライター・下田さんも、ゲームとアニメではそもそもの作りが違うということをちゃんと理解してくださっていたのも良かったです。

松岡P 例えば、「ただ沢山キャラクターを出すようなキャラクター紹介アニメにしたくない」という話にも「僕たちもそう思います」と言ってくださいました。そもそも、最初に原作側に話しに行くとき、僕自身今後やりにくくなるのが嫌なので「ゲームとアニメのギミックは違うから動くアニメーションとして面白くなるようにしたい」、「それで多少の変化が出ると思うけど、その上でおもしろくしようと思っています」と全部最初に言うようにしているんです。そこで嫌われたり怒られたりしたらご縁が無かったんだなという覚悟なんですが、今回は「むしろそのままやってもらおうとは思ってないです」と言ってくださいました。

――では、シナリオ会議はアニメの見せ方に変えるための会議になりますね。

入江氏 アニメとゲームってまず、盛り上げ方が違うんですよね。ストーリーのピークやカタルシスのもっていき方が。ゲームの場合、敵を倒したことでカタルシスを得られますが、アニメは受動的に見るものですから、似ているようで全然ちがう。そこの再構築ですよね。

松岡P そうでしたね。

入江氏 毎回長時間話し合いましたよね……。キャラクターは誰を出すかとか。そこから考えるから。

松岡P 例えば、ストーリーに大きく関連するメインのタマシイとか登場人物はある程度決めていたんですが、そこへ行くまでの敵などは決めていなかったんですよね。

入江氏 紛糾しましたね。(解禁されたPVに出ているので)もうわかっているから言いますけど「ロウ」になるまでにはいろいろありましたから。

松岡P 資料を見て「誰にする?」って。

入江氏 あまりにも敵らしいのはモンスターっぽくなっちゃうし、普通の人間というのも画的な部分で違うなぁと。

――そこのさじ加減は難しいですね。

入江氏 タマシイって消滅の被害者なので、完全な敵ではないですから。とはいえ、ある程度の恐怖をあたえなきゃいけないので、ロウに落ち着きました。あと、バトルもアニメにする上で苦労しましたね。

松岡P そうでしたね。ゲームでは毎回バイクに乗って戦うけれど、アニメにするとなると毎回同じ展開だと画変わりしないので飽きてしまう。

入江氏 スフィアも、集めながら走るの? そもそもなんでバイクで走っていくの?と、アニメに落とし込むとき意外と「どうしよう?」となる場面が出てきたんですよね。しかも、ロストまでってだいたい1時間もあれば行ける計算なんです。

松岡P だからすぐに着かない理由を考えましたよね。アニメならバイクから降りるときもあるんじゃない?とか。

入江氏 一度撤退するとかね。そのうえで“消滅都市感”が出ないといけないから。そこは苦労しました。

――「着いてしまう」というと、実際に地図を見ていたんですか?

入江氏 そうですよ。明言していませんが、一応舞台は東京なのでアニメだと距離感とかごまかせないんですよ。「これだけ走っていたらいい加減着くだろう」となるから(笑)。書くときもそのつもりで。今このへんにいるんだろうなと考えながら書いていました。Wright Flyer Studiosの大桑さんと一緒にロケハンに行ったりして土地勘もつけて。

松岡P 結構いろんなところに行ってましたよね。

入江氏 行きましたね。そこまで足を運んで、写真を撮って。……本来僕がやる仕事じゃないんですけどね(笑)。リアリティは大事にしたいので、今どのへんにいるのかというのは町並みでわかるかもしれないです。明言はしていませんけど。

――それが『消滅都市』のリアルですね。

松岡P そうですね。極力リアルにしたかったです。ファンタジーとは言え消滅みたいなことって、絶対に起きないとは断言できないじゃないですか。

入江氏 そうですね。自分たちの生きている世界と地続きじゃないと意味がないんです。

――では、とくにこだわった部分はどこですか?

入江氏 (2018年末に公開した)第1PVで出ていますが、警察は絶対に出したかったんです。それも、地に足ついた話にしたかったからなんですが。

松岡P 最初は入れるつもりではなかったんですけどね。

入江氏 そう。でも、深刻な出来事が起きているのに、政府や警察が動かないとおかしいじゃないですか。

――視聴者も、「なんだか大変なことが起こっている」とわかりますもんね。

入江氏 そうなんです。起きていることの規模感がわかりますよね。主人公たちがわーっと驚いているだけでは、バリエーションが限られてくるじゃないですか。そこで警察が出てきたことで、現実と繋がったような気がしました。

松岡P あとアニメ内では説明したりはしませんが、なぜこういう世界観なのかどういうギミックなのかは、当たり前ですがちゃんと理由を決めています。ご都合な理由にはしたくないので。

入江氏 (会議に出席している)5、6人の大人が雁首揃えてうーんうーんいいながら(笑)。

熱量の高さが生んだ極限状態の会議

――脚本家さんの話を聞くと、よく「直し」の過酷さが挙がります。入江さんはどうでしたか?

入江氏 それはもう! 決まっていたプロットをイチから作り直すことが何度かありましたね。「やべえ俺……」ってヘロヘロになったことがあります。で、プロット直してもう一度第一稿からとか。

入江氏 なんせ5、6人の大人が全員好きなことを言うんですよ。それが全部違う意見 だから。

松岡P 熱量が高いからどうしてもそうなっちゃうんですよね。

入江氏 そうそう(笑)。で、なんとなく場がまとまって「じゃあ入江さんお願いします」となるんですけど、家へ帰って唖然とするんです。

松岡P まとまっているようでまとまっていませんからね(笑)。

入江氏 これを僕が全部まとめるのか……ってなっていました。

松岡P とはいえ、理想的な会議でした。それぞれに意見があり、決してネガティブではない雰囲気で言い合うという。下田さんも監督も林さんも皆さん言っている意見は確かにと思えることばかりでしたし。

入江氏 みんな初対面くらいでしたけど、よく機能しましたよね。みんな年齢が近いから、遠慮して言えないみたいなことがなかったから良かった。白熱していましたね。

松岡P あとは入江さんが仏だったのもありますけどね。どう考えても。

入江氏 あ〜そうですかねぇ(笑)。

松岡P 激怒してよかった場面が結構ありましたよ? 我慢しているなって思ってましたもん。

入江氏 確かに、逃げようと何度か思いました。僕が消滅しようかと。

――そうなんですね……!

松岡P だから僕、出口から一番近い場所に座っていたんですよ。誰かが怒って帰ろうとしたら止めなきゃいけないから(笑)。

入江氏 幸いそこまではいかなかったですけどね。

――それに近いことは。

2人 ありましたね(笑)!

“現実”を感じながら観て欲しい

――おふたりはアフレコにも立ち会っていたかと。どんなふうに進んでいましたか?

松岡P 宮監督がすごく難しい注文をするなと言う印象でした。

入江氏 それは僕も思った!

松岡P 簡単に言うと、今回のアニメの場合、映像で感情がわかるから、絵の表現と声の表現を合わせないで欲しいという話で。

入江氏 要は、「書いてある通りの芝居をしないでくれ」というすごく難しいことを言っていました。台本や映像しか頼りになるものがないのに。それに頼れないわけですからね。

松岡P 映像で感情が分かるので声に感情を乗せ過ぎない、乗せ過ぎると大げさすぎてしまうからだと思います。なので声優さんたちの絶妙な調節を頼りにしていました。あとは、ユキとタクヤの距離感が話数を重ねるごとに近くなっていくので、そこも。別にタクヤはユキに対して嫌いなんて思っていないはずなんですけど、最初のころはそうともとれる声なんです。「絵はそうじゃないから大丈夫」と。そこから徐々に普通の距離感になっていくんですが、仲良しこよしになるような性格でもないから。タクヤ役の杉田さんとユキ役の花澤さんは難しかったと思います。ゲームは止め絵だから感情を出さないといけないけど、そういう部分でもアニメとゲームでの違いは出てきますよね。

入江氏 アニメはそうじゃないですからね。勝手がだいぶ違ったと思います。

松岡P とはいえ、回を重ねていくとだんだん直すこともなくなっていって、最後ほぼなにもなかったんです。監督も「すごい!」って言っていましたね。

入江氏 シナリオを書いた僕としても「ここまできたんだ」ってぐっと来ました。声優さんが命を吹き込んでくれたから。

――ますます楽しみになってきました。最後に、制作側の2人の視点でアニメ『消滅都市』の楽しみ方を教えてください。

松岡P 原作ゲームを知らないから、やったことないからとか変なバリアを張らず観てほしいなと思います。ゲーム原作のアニメだと、どうしても「ゲームを知っている人が楽しむものでしょ」って思われてしまうと思うのですが、そういうふうに作っていないです。第1話からメッセージ性のある内容になっていて、考えたり妄想したりして楽しんで頂けたら嬉しいです。バリアは取っ払って、とりあえず観てみてください。よろしくお願い致します!!

入江氏 非現実ではあるんですけど、自分たちが生きている世界と地続きだというのは意識して書いているので、「消滅がいつ起きてもおかしくない」というつもりで観ていただけると面白いんじゃないかなと思います。そして、ユキがどんなふうに変わっていくのか、ユキとタクヤの旅を見届けて欲しいです。

インタビュー:松本まゆげ