Interview

現実とリンクする世界観を表現した先にあるものは……
TVアニメ『消滅都市』宮監督&松岡プロデューサーインタビュー

2018年5月27に開催された「PROJECT消滅都市発足発表会」にて発表された人気アプリゲーム『消滅都市』のアニメ化。

ユキとタクヤを中心とした重厚なストーリー、そしてライトながら爽快感あふれるアクションが人気の本作。同作を知るプレイヤーにとっては待望のアニメ化、といっても過言ではないだろう。

今回は、アニメ制作のキーマンとなる、監督の宮繁之氏、プロデューサーのポニーキャニオン・松岡貴徳氏にインタビューを敢行。制作のきっかけ、そして現場がどのような考えで制作にたずさわっているかをうかがうことが出来た。


アニメスタートのきっかけはアプリゲームにドハマリしたこと

――前回、「アニメ!アニメ!アニメ!」でのインタビューでは、ポニーキャニオンさんのプロデューサーからの話がアニメ化のきっかけになったとお聞きしました。この『消滅都市』をなぜアニメ化しようと思ったのでしょうか。

松岡P 私自身が一時期アプリゲームで面白いタイトルを探している時があったんです。いろいろなタイトルをプレイしていたタイミングで、ちょうど知人から「『消滅都市』って知ってる?」と紹介されたんです。早速やってみたら、これがものすごく面白くて。

アプリゲーというと、時代時代でゲームジャンルの流行りってあるじゃないですか、リズムゲームだったり、パズルゲームだったり、RPGだったり。当時は『消滅都市』のような横スクロールタイプのアクションは未経験でした。ストーリー、アクション、そしてゲーム内の音楽、私の好みに完全に合致したんです。

――『消滅都市』にドハマりしたのがきっかけだったと。

松岡P プレイしていてアニメ化をハッキリとイメージできたのも大きかったです。

――その松岡プロデューサーにより、「消滅都市」のアニメ化の企画がスタート。そして宮監督はその話を受けたときに、どんな印象をまず受けたのでしょうか。

宮監督 正直なところ、大変だろうなって思いました(笑)。私はふだんゲームをさほどプレイしないのですが、今回はそれも勉強だと思い、かなり遊ばせてもらいました。実際、奥さんにも「なんでそんなにプレイしてるの?」って言われるレベルでハマってしまいました。

このタイトルは、異世界で……、剣と魔法があって……巨大な龍を倒しにいこうといったタイプのファンタジーな世界観ではなく、現実と地続きの物語じゃないですか。これをアニメに落とし込むのは難しそうだなと感じました。

――おっしゃるとおり限りなく現実に即した世界観のタイトルです。

宮監督 この特徴的な音楽とアクションの楽しさをアニメーションに落とし込むか、そしてそこからドラマとしてどうやってつくろうか、ゲームで語られていない行間をどう埋めるか。そして、重苦しい雰囲気だけではないポップさをどうやって出すか。

その相反している部分をどう融合させるかに最初は悩まされました。現在ではかなり納得できるレベルで落とし込むことができていて、いい作品になりつつあると思っています。

――原作を手がけているWright Flyer Studios側ともかなり密な連携を取られているとお聞きしました。ふだんからどのようなやり取りをされているのでしょうか。

松岡P シリーズディレクター兼シナリオライターの下田さんを含め、原作ゲームのコアメンバーがしっかりとアニメ側にも入っていただいています。正直、原作の方々はゲーム本編を運営しているので、アニメへガッツリとした参加をするのは時間的にも難しかったりするものなのですが、かなりの時間を割いてこのアニメ『消滅都市』にしっかりと向き合っていただけています。

そんな中でも感じていることが、Wright Flyer Studiosさんのこの作品にかける熱量。これが本当にすごくて、ゲームをプレイしている方にも納得していただける内容になっていると感じています。

ゲームとアニメの表現の差、見せたい部分

――ゲームをアニメ化するときはそのタイトルのファンがいて視聴する以外に、そのタイトルを知らないアニメファンも見ることになります。ここがゲーム原作のアニメにとって課題になる部分だと思いますが、それに対してどのようなスタンスで臨んでいるのでしょうか。

松岡P ゲームのアニメ化ではよく「人気キャラクターを全部出してほしい」といったことをオーダーされ、キャラクター中心の作品になりがちです。そのパターンとは異なり、この作品ではストーリーを中心に制作することを考えています。

原作ファンの皆様にはご理解いただきたい部分でもあるのですが、登場キャラクターはある程度限定しつつ、『消滅都市』という作品全体のテーマを強く出す方向性で進めています。もちろんこれはWright Flyer Studiosさんとの共通認識でもあります。

それにより、ゲームを遊んでいる方々にも満足していただけるのはもちろん、アニメから入った方々も置いてけぼりにならないドラマとして仕上がっていると思います。

――宮監督はいかがでしょうか。

宮監督 『消滅都市』を紹介されたとき、受けた雰囲気とはまったく印象が違いました。ビジュアルを見させていただいた時点では重いノベルタイプだと思っていたのですが、やってみると私でも遊べるライトなゲーム性。それにストーリーといい音楽が乗っている。

ゲームのアクションシーン、表現、そして物語をアニメではしっかりとつくっています。ゲームをプレイしている皆さんにとっても「このシーンはそういうことだったんだ」と再確認できるはずです。

――ありがとうございます。ゲームとアニメはストーリーに違いがあるのでしょうか。もしくはどのような形でリンクしているのでしょうか。

宮監督 私は今回、ゲームのストーリーは原案に近いものだと考えています。Wright Flyer Studiosさんからは、このシーンはゲームではこのような表現をしている、と細かに教えてもらいながら、アニメーションのドラマに落とし込んでいるという感じです。

アニメ『消滅都市』を見てもらえば原作のゲームがやりたくなる、そしてゲームをすでにプレイしている方にも納得してもらえるようなものづくりをしています。

松岡P ゲームでは展開上描かれていないシーンもあると思います。その部分をアニメでは補完しています。

――行間を埋める、といったところでしょうか。Wright Flyer Studiosの方々とはこのシーンを見せたいといったやりとりはあるのでしょうか。

松岡P ゲーム内のこのストーリーを中心に作りたいというものは、第1話から第12話まで大まかな構成をWright Flyer Studiosさんと互いに出し合ったタイミングがありました。そこでびっくりしたのが、出し合った内容がほとんど同じだったことです。

『消滅都市』の見せたい部分がお互いに共通認識されてたんです。このときの大枠を軸に、アニメ側で展開したいストーリーの細部を詰めていく形で進んでいます。

『消滅都市』の人間ドラマを重点的に描く

――『消滅都市』は音楽も含めどこか物悲しさが全体的に流れている、独特の雰囲気があるタイトルです。アニメ化するには難しい作品と先ほどおっしゃっていましたが、とくに気を使っている部分を教えてください。

宮監督 現実に私達が生きて、死んでいく世界。そんな現実の世界観の延長にあるのが『消滅都市』の世界です。凄くシビアなことで災害と呼んでいいかはわかりませんが、ひとつ都市が消滅して多くの人に不幸が訪れた。

そして、ユキは父、母、弟も失っている状態でスタートする。現実ではものすごく厳しい状況でもゲーム本編ではある程度ライトに表現されているので重苦しさを多少は回避してプレイできるのですが、アニメーションでそこをリアルに落とし込みすぎると、必要以上に重く、つらくなってしまうんです。

――ふたりの関係性が徐々に変化していく部分も作品の魅力です。

宮監督 “ロスト”と呼ばれる目的地へ向かっている道中にタクヤが我慢したこと、ユキが感じたこと、ゲームでは描ききれなかった細かい部分をアニメーションでは伝えていきたいと考えています。

私達は現実の日常生活でも、言いたいことを我慢したり、出来れば言いたくないことも言わなければならなかったり、相手のことを気遣って発言しないことが多いと思います。彼らのそんな逡巡や心の動きを丁寧に作らせて頂いております。

そこを上手に表現しないと『消滅都市』の地に足がついたドラマを描けないと考えていて、その点に特に気を払っています。

――『消滅都市』の根底にある部分ですね。

宮監督 ユキとタクヤのあの年齢だからこそ抱く感情、無鉄砲さ、無計画さでしょうか。行く先に何があるかわからない、でも向かう。正直、私達中年だったらまた別の物語になる(笑)。彼らだからこそ、この窮地を乗り越えられたんだ、といった具合に。

また、このアニメをディザスター・ムービーではなく、彼らの青春記として描くことも心がけています。そうすれば私達のリアルな日常とリンクする、近い感覚で見ることができるため、視聴者の方々にも感情移入していただけるのではという思いからです。

私はアニメーターの下谷さんとどうしても組みたかったのですが、ご依頼するときにお話したのが今回つくるのは「劇画じゃない青春期」ということ。リアルに描きすぎると戦争映画みたいにシビアになりすぎるので、ビジュアルは極力影も少なく、ポップでライトな作りで、と。劇画になりすぎないようにとかなり注意を払っています。

――あの世界観でさらにリアルに描きすぎると重くなりすぎてしまう、と。

宮監督 理屈をこねくり回しすぎても良くないので、『消滅都市』の体感的なおもしろさをアニメーションでも再現したいのです。小難しいことより、タクヤがボロボロになって前へ進んでいく、そしてタクヤに託す「この人となら……」というユキの気持ちをどう表現するか。

人生には時に勢いが不可欠で、その若者の無鉄砲さがすべての障害を切り抜けることもあるのでは?ということを出来たら・・・と。

徐々にお互いを信頼していく、そういう物語が作品の根底にあるので、共感して頂ける部分が多いのではと思います

――ありがとうございます。そして、そのふたりの関係性は演じられる声優の方々のパワーも加わっていきます。アフレコの現場はどのような雰囲気なのでしょうか

宮監督 言いたいけど、言わない、言っちゃいけない。そんなことが日常にはいっぱいある。伝えるためには怒ったり、声を荒げたりしてはダメといった具合に。ユキとタクヤはどちらも簡単に言うと“ツンデレ”なので、本当の言葉が少ない。主役のふたりにはそういう泰然自若な芝居をして頂いています。おふたりにはたいへんな演技を求めているのですが、さすがですね。

あまり多くの言葉を表現しない彼らとは逆に、ギークをはじめとした周りを固める人間たちが強く反応することによって、彼らの本心、言いたいことを暗にフォローしています。割と洋画の吹き替えのような匂いもさせています。

スクーターを使ったアクションとタマシイの表現

――アクションパートもゲームのメインパートのひとつです。そこがアニメーションになってどのように表現されるかも気になっています。

宮監督 スクーターでのアクションは『消滅都市』である限り、やはり切り離せない部分です。スクーターアクションをゲームそのままのかっこよさをアニメーションに落とし込むのは難しかったですが、アニメーターさん及び3DCGチームの皆さんたちが日夜その表現を工夫してくれたおかげで、ベストに近いものになったと思います。

――スクーターでのアクションとともに、タマシイとのバトルの描き方もポイントになりそうですね。

宮監督 タマシイとの戦いもロストに向かうためのひとつのハードルとして、どう表現するか頭を悩ませたところです。怪獣が攻めてくるわけではないですし、彼らもある意味被害者。ボコボコにすればいい、退治すればいいとは限らないんです。

実際、アクションの中で倒すといったシンプルなパターンもありますが、ドラマで相手の気持ちを受け止めるという解決策もある。タマシイとのバトルと一言でいっても、ひとつのやりかたではなく、さまざまな解決方法を提示しています。

松岡P また、「このタマシイを出したい」というのでは一切なく、ストーリー展開から逆算してと言いますか……ストーリーを展開するうえで絶対に必要なタマシイに登場してもらっています。ロストによって消滅した人は死体が見つかっていないので死んだとは言えない、タマシイは幽霊的な存在ではありませんので、幽霊に見えないようにしてくださいとは制作陣にお伝えしています。そのあたりの演出も見て欲しい部分です。

宮監督 この『消滅都市』の世界を描くためには、“リアルの延長線上”という部分を大事にしているというのは繰り返しお伝えしたいです。

複数の人間がひとつの目的に向かっていく、という思いは共感してくれるはず。人間交差点……、各個人にはそれぞれ目的、理想があります。その瞬間を仲間とともに目標へ向かって走る、というのは視聴者みんなの心を揺さぶるものがあると考えています。

そして、今回は登場キャラ、タマシイも含めひとりひとりを大事に扱っています。無計画にいっぱい登場させるのではなく、ひとりひとりを丁寧に描くことを意識しています。見ていただいた結果、登場したタマシイを好きになって頂けるとうれしいですね。

プロデューサー、監督が愛する『消滅都市』

――少し制作話から離れるのですが、好きなエピソードやストーリーなどを教えていただけますか?

松岡P 私はリョウコたち警察関連のお話がいちばん好きなシーンです。もちろん、ここはゲームにはないストーリーもありますので、楽しみにしてほしいですね。監督のティザービジュアルのラフ案がほんとうに最高でした!

宮監督 ありがとうございます(笑)。私が大好きなのはギークです。彼がいるからこそユキとタクヤがこの過酷な状況にも耐えていける。

なにかとひどい目に会いがちな彼ですが、彼がいることで周りがどれだけ救われているか……。その部分も含めて大好きなキャラですね。

――『消滅都市』愛を感じる興味深い話をありがとうございます。最後に、このアニメ『消滅都市』を楽しみにしているひとたちにメッセージを頂けますでしょうか。

宮監督 表に出すまでは正直不安です。もちろん、ゲームファンの期待に応えられるかという部分もあります。ですが、本当にスタッフ全員、制作進行から、プロデューサーまで……ものすごいひとたちの努力、全員のつながりによって、ものすごいものが生まれようとしている実感もあります。

私がいま制作陣を代表してインタビューを受けていますが、ここにいない多くのスタッフの力があってのことです。タクヤやユキの表情ひとつから、背景に描かれたギークのガレージに貼ってあるポスターに至るまで、ひとつも自然に発生したものはない。みんなが頭を悩ませて、手を動かして表現したもの。それを、みなさまに届けられると思うと嬉しいです。アニメ『消滅都市』、ビジュアル、キャラ、演技含め、全体を楽しんでください。本日はありがとうございました。

松岡P 『消滅都市』のゲームファンの方のなかには「自分の感じているものと違う出来になってしまう」など、アニメ化に対して危惧を覚えている方も多いと思います。

今回は原作のWright Flyer Studiosさんが情熱を持ってアニメ制作に参加していただいていて、一緒に作ることができています。この両方のスタッフの力もあり、ゲームをプレイしている方に見ていただいても「なんだ、これ?」というものには絶対になっていません。

そして、アニメで初めて『消滅都市』を体験する方も、「観ていて何のことだかわからない」ということにならないように意識しています。とにかく一度観て頂いて、アニメ『消滅都市』ならではの世界を感じて頂きたいです。

そして観ていただければ、本作のキャッチコピーがなぜ「記憶は、生きつづける。」なのかが理解していただけると思います。ユキとタクヤ達を見て、視聴者の方々にどう感じていただけるか、私達もそれが楽しみです。

アニメは2019年 TOKYO MXほかにて放送開始予定となります。ぜひご期待ください。

――貴重なお話、ありがとうございました。

インタビュー:小鳥遊蓮司